あにろっくのブログ

誰かの明日への生きる力になれたらと思います。いやまじめか!

『青春やりなお』2

俺は死んだ。そして、気がついた時には中学1年生の自分に戻っていた。いま、目の前では新入生に向けて、部活動紹介をしている先輩たちがステージに立っている。そうだ、俺はここでキラキラ輝いて見えたハンドボールに興味を持ち翌日、入部希望届けを提出したんだった。「そういえば、もしここで違う部活動を選択していたのならば、俺の人生、少しは変わっていたのかな」

思えば、10年という時間を部活動に費やしてきた。その間、異性、漫画、音楽、洋服など自分の好きなものを犠牲にしてきた。じゃあハンドボールに関わる仕事に携われたかというと、全然そんなことは無かった。

「よし、大嫌いな先輩がいるけど、2周目の人生では野球部に入部してみるか!」こうして、俺の青春のやり直しが始まった。 

次の日、野球部に正式入部となった。連日、球拾いと声出しばかりで辟易(へきえき)していた。隣のコートでは、ハンドボール部の1年生が試合形式で練習している。マイナースポーツあるあるで、部員が少ない部活動は1年生でもレギュラー入りなんて珍しくないのである。「野球部もサッカー部もこの大人数の中から選ばれて試合に出るのか、一瞬たりとも気が抜けないな」今までそんなことを思ってもみなかった。立場が変わると見方も変わるのだ。

ウチの野球部はヤンキーが多い。部活が終わると部室で後輩の「指導」が始まる。この「指導」とは野球の指導とは別物で、先輩たちも当時の先輩たちから行われていた暴力である。今日もやれ声が小さい、態度が悪い、挨拶ができていないなど、あることないことをこじつけて俺たち1年生で憂さ晴らしする。顔は殴らない、バレないように首から下を殴られる。だからいつも体はあざだらけだった。指導が終わりヤンキーたちは学校近くの駄菓子屋でたむろする。駄菓子屋の陰ではタバコを吸ったり、彼女とキスをしている先輩もいた。俺たちは「さようなら!」と大声で挨拶しその横を通り過ぎる。「あと2年経てばこいつらとはおさらばだ」野球部に入って大失敗だったが、ここで学んだこともある。